東京の賃貸物件を契約する借主の方は、東京都紛争防止条例(東京ルール)に基づく説明を受けることになっています。
この条例が施行されて10年以上が経ち、昔に比べるとある程度認知はされてきました。しかし、「どういった内容の条例なのか?」また「どういった効果があるのか?」を知らない借主の方も、まだまだ多いのではないでしょうか?
そんな、東京都紛争防止条例(東京ルール)に関する疑問は、本記事を読んでいただければ簡単に理解できます。
本記事は、『東京都紛争防止条例(東京ルール)ってなに』について詳しく解説致します。
東京都紛争防止条例(東京ルール)とは
東京都紛争防止条例(東京ルール)とは、平成16年に東京都が制定した条例です。
平成10年に国土交通省(旧建設省)により、原状回復におけるトラブルとガイドライン(初版)が作成されましたが、その後も東京都における敷金トラブル件数は増加しており、東京都における良好な住宅の供給を目的とし、退去時の修繕負担を明確化した賃貸住宅紛争防止条例が施行されました。
条例の内容
東京都紛争防止条例(東京ルール)の内容は以下のとおりです。
住宅の賃貸借に係る紛争を防止するため、原状回復等に関する民法などの法律上の原則や判例により定着した考え方を宅地建物取引業者が説明することを義務付けたもの
また、宅地建物取引業者が説明することの具体例として、以下の4項目をあげています。
- 退去時の通常損耗等の復旧は、貸主が行うことが基本であること
- 入居期間中の必要な修繕は、貸主が行うことが基本であること
- 賃貸借契約の中で、借主の負担としている具体的な事項
- 修繕及び維持管理等に関する連絡先
条例の適用対象
東京都紛争防止条例(東京ルール)の適用対象は以下のとおりです。
- 東京都内にある居住用の賃貸住宅(店舗・事務所等の事業用は対象外)
※都内の物件を扱う場合、都外の宅建業者も説明が義務付けられる- 平成16年10月1日以降の新規賃貸借契約(更新契約は対象外)
- 宅地建物取引業者が媒介または代理を行う物件
上記のとおり、東京都にあるすべての物件に東京都紛争防止条例(東京ルール)が適用されるわけではなく、店舗・事務所等の事業用は説明の対象外になっています。この点は間違っている方も多いので、注意してください。
東京都紛争防止条例(東京ルール)に基づく説明をうけた効果について
東京都紛争防止条例(東京ルール)に基づく説明をうけた結果、借主にどういった効果が発生するのでしょうか?
これを説明する前に、まずは「東京都紛争防止条例に基づく説明書」のサンプルをみてみましょう。


このサンプルは、東京都都市整備局が公開しているものになります。
このサンプルを見る限り、ガイドラインにそった貸主・借主負担の原則が書いてあるだけの説明書に見えます。しかし、実際の実務ではこのサンプルのまま借主に説明するということはまずありません。
実際の実務上では、特約が記載されていることが多くあるからです。

特約の例としては、以下のような内容が多くあります、
- ルームクリーニング費用は借主負担とする
- 畳の表替え、襖の張替費用は借主負担とする
では、当該箇所に借主負担となる特約が記載されている場合、その内容は有効になるのでしょうか?
特約が有効となる要件
裁判所は特約が有効になる要件として下記3つの要件をあげています。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観性、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
上記要件を説明書の内容と比較すると、一見すると要件を満たしているようにも考えられます。
しかし、裁判所は特約が有効となる要件として、上記三要件とあわせて「通常損耗を借主負担とするには明白な合意がなければならない」としています。
明白な合意として裁判所が重要視している点は、退去する際に借主がいくら負担するのかが予測できる「費用の予測性」が重要と考えられています。
費用の予測性をわかりやすく記載すると、以下のような内容になります。
- ルームクリーニング費用は借主負担とする。尚、ルームクリーニング費用は30,000円とする。
- 畳の表替え、襖の張替費用は借主負担とする。尚、畳の表替えは一畳当たり5,000円。襖の張替費用は一枚当たり5,000円とする。
裁判所は、上記のような、退去時に借主が負担することになる費用の内訳が詳しく説明されている場合に「特約は有効」とし、「借主は当該費用の負担をしなければならない」と判断する傾向にあります。
まとめ
いかがでしたか?
本記事では、「東京都紛争防止条例(東京ルール)ってなに」について詳しくご紹介しました。
東京都紛争防止条例(東京ルール)が施行されたことによって、不当な原状回復費用を請求をする貸主や業者は少なくはなってきていますが、この説明書の内容を逆手に不当な請求をしてくる業者もまだ多くいることも事実です。
東京にお引越しをご検討されている方は、原状回復費用が過剰に借主負担となっていないか、契約時に十分注意してくださいね。