敷金精算でよく聞かれる用語に「経過年数」があります。経過年数とは、「物の価値は年数の経過によって減少する」という考え方です。
この経過年数は部材ごとに考慮される年数が違います。また、経過年数を考慮しない部材もあります。たとえば、クロスの経過年数は「6年」に対し、襖の経過年数は「経過年数無し」になります。
本記事では、『経過年数の具体的な年数が知りたい!!』を詳しくご紹介いたします。
目次
各部材の具体的な経過年数
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畳表
消耗品に近いものであり、減価償却資産になじまないので、経過年数は考慮しない。
畳床、カーペット、クッションフロア
6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する。
フローリング
経過年数は考慮しない。ただし、フローリング全体にわたっての毀損によりフローリング床全体を張替えた場合は、当該建物の耐用年数で残存価値1円となるなるような直線を想定し、負担割合を算定する。
クロス
6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する。
襖紙、障子紙
消耗品であり、減価償却資産とならないので、経過年数は考慮しない。
襖、障子等の建具部分、柱
経過年数は考慮しない。(考慮する場合は、当該建物の耐用年数で残存価値1円となるなるような直線を想定し、負担割合を算定する。)
設備機器
耐用年数経過時点で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する(新品交換の場合も同じ)。
耐用年数5年のもの
・流し台
耐用年数6年のもの
・冷房用、暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)
・電気冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ)
・インターホン
耐用年数8年のもの
・主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)
耐用年数15年のもの
・便器、洗面台等の給排水、衛生設備
・主として金属製の器具、備品
当該建物の耐用年数が適用されるもの
・ユニットバス、浴槽、下駄箱(建物に固着して一体不可分なもの)
鍵の交換費用
鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を全額賃借人負担とする。
クリーニング
クリーニングについて、経過年数は考慮しない。賃借人負担となるのは、通常の清掃をしていない場合で、部位もしくは住戸全体の清掃費用相当分を全額賃借人負担とする。
当該建物の耐用年数
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上記一覧の中に「当該建物の耐用年数」という言葉が出てきました。
当該建物の耐用年数は国税庁が通達によって定めており、具体的には下記のとおりになります。
木造(住宅用)
耐用年数:22年
鉄骨鉄筋コンクリート、鉄筋コンクリート(住宅用)
耐用年数:47年
重量鉄骨造、鉄骨造(住宅用)
耐用年数:34年
軽量鉄骨造(住宅用)
耐用年数:19年
まとめ
いかがだったでしょうか?
クロスの経過年数を知っている方は多いかもしれませんが、他部材の経過年数は知らない方も多かったのではないでしょうか?
経過年数の具体的年数を知ることは、適正な原状回復費用を算出するために必須の知識です。
ぜひ、各部材の具体的な経過年数を覚えておきましょう。
48年住んだ木造アパートを引っ越します。
それによる修繕費用は払わなくてはいけないのでしょうか?
ヒラハタユタカ様、
ご相談いただきありがとうございます。
行政書士の永井と申します。
>>48年住んだ木造アパートを引っ越します。
それによる修繕費用は払わなくてはいけないのでしょうか?
記載いただいた内容だけでは、何ともお答えが難しいですが、
48年もの長期のご入居を考えれば、修繕費用を支払うとしても、そこまで高額の負担にはならないと思います。
ふすま は
消耗品であり、減価償却資産とならないので、経過年数は考慮しない。
と記載がありますが、借り手側が修繕費用を全額負担するということでしょうか?
マサカリ様、
故意・過失が存在する前提でお答えすれば、おっしゃるとおりと考えられます。
敷金返還についてここまで詳しく具体的に説明されているサイトは初めて拝見したので
とても興味深く読ませて頂いております。ありがとうございます。勉強になります。
「当該建物の耐用年数」という言葉を初めて知りました。
当方は築35年の鉄骨造のアパートに住んでいて、近々引っ越すのですが
窓のさんの部分に換気扇を取り付けるためにねじ穴を2か所開けてしまいました。
鉄骨造の建物の耐用年数は34年とのことで、若干過ぎてはいますが
やはりこの穴に関して、原状回復費用を請求されたら応じなければならないでしょうか?
その際、開けたねじ穴の現状回復費用とはいくらくらいなのでしょうか?
よろしくお願い致します。
めぐみ様、
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、「経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、(中略)賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである」としています。
したがって、工事費に対して1~2割程度、例えば工事費が10万円であれば1~2万円程度の負担はやむ得ないと思います。