高齢化社会の昨今、借主である入居者の方がお亡くなりになるケースは増えているのが現状です。現に、私が前職勤務時にも何度かそういった場面に遭遇したことがあります。
借主(入居者)がお亡くなりなった場合に賃貸借契約上問題となるのが、「誰がその部屋の原状回復費用を負担するのか」ということです。
本記事は、『借主(入居者)が亡くなった場合、保証人は原状回復義務を負うの?』について詳しく解説致します。
目次
保証人と連帯保証人の違い
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民法では下記2種類の保証人が規定されています。(今回ご紹介する保証人以外にも厳密には保証契約はありますが、賃貸借契約においては関係ありませんので割愛させていいただきます)
- 民法446条規定の保証人
- 民法454条規定の連帯保証人
契約関係では何気なく「保証人」という言葉を使っていますが、上記保証人の権利と義務にはかなりの違いが存在します。
①:民法446条規定の“保証人”
民法446条規定の保証人は、仮に借主が家賃等を滞納してしまった場合に、
「まずは借主に対して請求してください!!」=催告の抗弁権
「借主がお金持ってるからそこからとって!!」=検索の抗弁権
という強い権利を持っています。
②:民法454条規定の“連帯保証人”
これに対して民法454条規定の連帯保証人はどうでしょうか?
実は連帯保証人には、上記「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」が二つとも認められません。
つまり、貸主が連帯保証人に原状回復費用を請求してきた場合、借主が貸主に対して支払い義務があるものに関しては、連帯保証人にも同様に支払い義務が生じるということです。
実務でみる保証人
賃貸借契約の実務上は、お部屋を借りる際には「保証人」をつける契約になっています。この賃貸借契約の実務上要求される保証人というのは「連帯保証人」での契約になっています。
保証人は原状回復義務を負うのか
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上記のとおり、賃貸借契約の実務上要求される保証人というのは“連帯保証人”であり、保証人は借主と同一の義務を負うことになります。
つまり、万が一借主の方が亡くなった場合、その部屋の原状回復義務は保証人が負うことになるのです。
ただし、保証人が原状回復義務を負う場合であっても、消費者契約法や国土交通省のガイドラインが適用された上で、適正な原状回復費用のみ支払い義務が生じます。
相続放棄をすれば原状回復義務を逃れられる?
よく「相続放棄をすれば原状回復義務は逃れられますか」というご質問があります。「相続放棄」とは、相続人の方が被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産どちらも放棄するということです。
確かに賃貸借契約の実務上、保証人は借主の三親等以内に限定されていることが多く、そうした場合相続人=連帯保証人ということも十分に考えられます。
しかし、相続放棄をしたとしても、連帯保証人の原状回復義務まで逃れられるわけではありませんので注意が必要です。
これは連帯保証人の方が相続人であっても法律的に見ると別個の存在であり、相続放棄をしたとしても連帯保証人の義務まで逃れるわけではないからです。
まとめ
保証人となるような方は、借主の方との関係性が近い方が一般的です。万が一借主の方が亡くなってしまった場合、受けるショックも相当大きいものと思います。
それでなくとも、近しい関係性の方がお亡くなりになった場合は、色々な手続きや手配が必要となり、ついついお部屋の原状回復のことは後回しになってしまうのではないでしょうか。
しかし、だからといって、連帯保証人の原状回復義務がなくなるわけではありません。敷金・原状回復トラブルにまき込まれないよう早めの対応を心がけましょう。