7faea0e4228c569a133d98f14d4a930d_s引越シーズンである2~4月が終わり、そのシーズンと連動するように忙しくなる敷金返還業務ですが、6月は怒涛の忙しさから少し解放された月でした(;’∀’)

ただ、それと反比例するように今月は貸主の方からのご相談が多かったです(笑)

弊所の敷金返還業務は、借主の方からご依頼いただく場合がほとんどで、ご相談のお電話やメールをいただくのも、借主がほとんどなのですが・・・

『なぜ今月は貸主の方から相談が多かったのか?』ご相談いただいた内容を考えながら私の予想をまとめてみました。

理由①:シーズン中に敷金返還トラブルが多発した

敷金返還を行う時期というのは、借主の方が退去してから1~2ヶ月後に行うのが一般的です。

先にも書きましたが、1年間の中で一番の引っ越しシーズンは2~4月ですので、貸主が借主に敷金を返還する時期としては3~5月が一番多いのではないでしょうか?事実、弊所の敷金返還のご依頼件数をみても3~5月が1年で一番忙しい時期になります。

6月はそういった忙しい時期が終わり、貸主の方にもある程度余裕がでてくる時期になるのでシーズン中の敷金精算に関して見直す時期だったのではないでしょうか?

実際のご相談内容をみてもすでに退去して精算しているが、今後どう対応していけばよいのか?というご相談が多かったように思えます。

理由②:民法改正が話題になっているから

二つ目の理由としては『民法改正が話題になっているから』です。

民法の改正は、当初のスケジュールよりかなり遅れており、いまだ具体的な時期は未定になっていますが、遅かれ早かれ、改正がおこなわれるのは確実でしょう。

そこで、貸主の方の最大の関心事は『敷金は絶対返還しないといけないのか?』ということです。

確かに改正案では『敷金は借主が滞納等をしてしまった時の担保として預けるもので、契約が終了して、部屋を退去したときに滞納等がなければ全額返しなさい。原状回復工事は貸主負担、借主は故意、過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用によって生じた損耗・毀損のみを負担しなさい』という内容を法律に明記するというのが大まかな概要になります。

貸主の方からすれば、敷金は出来るだけ返したくないという考えを持ってらっしゃる方が多く、この民法改正に関するご相談は多かったですね。

貸主の方へお伝えしたいこと

ここからが私の一番お伝えしたいことになります。少し長くなるかもしれませんが、ぜひお付き合いください。

貸主の方はもっと勉強しよう!!

今回は失礼を承知で書かせていただきますが『貸主の方はもっと勉強してください!!』といいたいです。特に地方の貸主の方、ご高齢の貸主の方には強くお伝えしたいと思います。

弊所にご依頼いただく案件の中の7割強は、貸主が地方の方または高齢の方の案件です。なぜ貸主が地方の方、高齢の方の案件が多いかというと、そういった方々は『今までこの敷金精算方法で問題なかった!!』『昔はこういう敷金精算方法だったんだ!!』という考えの方がとても多いからです。

たしかに昔はそれでも通用したかもしれません。戦後間もないころには、少ない住宅に多くの需要があり、貸主=強者、借主=弱者という考えによって、敷金精算の面においても貸主の都合のよい言い分が通用してきたと思います。

しかし、時代は変わりました。平成17年に出された最高裁判例によって『敷金は原則借主に返還するもの』という考えになっています。まずはこの考えを理解してください。

契約内容のチェックは貸主もキチンとしよう

私は、敷金トラブルが起こる原因は『貸主の方の認識不足、勉強不足』だと思っています。いまだに、上記最高裁判例や国土交通省のガイドラインを知らない貸主(不動産会社)の方がどれほど多いことか・・・

最近では、貸主の方が自ら契約書の内容をチェックする方も増えてきましたが、(大家業を投資、経営と捉えている意識高い系の方に多いですね)まだ多くの貸主の方が、契約書の作成や契約内容を不動産会社に任せっきりで、自分は契約内容をまったく把握していないなんてことは珍しいことではありません。これでは、いざ敷金精算!!となった時に、自分で自分の首を絞めるようなものですよ?

もちろん入居者の確保のためには、不動産会社の協力は欠かせません。なんでもかんでも口を出してくる貸主の方は、私も不動産会社の社員時代は苦手でした(笑)

しかし、自分で何も把握せずに不動産会社に任せっきりというのは協力とイコールではありません。

本当に敷金は全額返還しなければいけないのか?

では核心に入っていきましょう。

大家業をおこなっている以上、部屋の原状回復負担を出来るだけ少なくしたいと考えるのは当然理解できます。しかし、上記最高裁判例や今後改正が予想される民法によって、本当に敷金は全額返還しなければいけないのでしょうか?

答えは違います。

最高裁判例でも、”借主に原状回復義務を負ってもらう契約内容が有効な要件を満たした上で成立していれば”、原状回復費用を借主に負担させることができると判断しています。この考えは、民法の原則である契約自由の原則がある以上、民法が改正されても変わることはないと思われます。

つまり、昨今の敷金トラブルの原因は『借主に原状回復義務を負わせる契約内容が有効な要件を満たしていない』のにもかかわらず、借主に原状回復義務を負わせているから起こるのです。

このトラブルを回避するには、法律、判例、国土交通省のガイドライン等を勉強する以外に方法はありません。

確かに法律等の勉強は慣れないとなかなか気が進むものではないかもしれません。しかし敷金トラブルが起これば貸主の方の貴重な時間もお金も無駄になってしまうのも事実です。ここは一から原状回復に関して勉強してみませんか?

まとめ

今回の記事は貸主の方向けに書かせていただきました。一部失礼なことも書きましたがお許しいただければ幸いです。

昨今の敷金トラブルの原因は、貸主の方と借主の方の敷金精算に関する認識のズレから発生しています。そしてその認識のズレは、貸主の方の勉強不足から発生しているのが本当に多いと感じています。

私が借主の方からご相談をいただく中でも、借主の方の考え方として『入居させてもらっていたので、ある程度敷金が返ってこないのは仕方ないにしても、契約で決まっていないのに法外な請求には納得いかない』という意見がほとんどです。

つまり、『何がなんでも敷金を全額返してほしい』という考えではなく『契約で決まっていれば、キチンとお支払いします』という考えなのです。貸主の方が原状回復に関して知識を高めれば、こういった借主との認識のズレは確実に少なくなってくるでしょう。

株式会社HOME’Sによると、賃貸住宅の空室率は全国で19%前後となっています。これは借主の方が『賃貸に入居すると退去時に高額な原状回復費用を請求される』との認識の結果、住宅を購入した方が”コスパ”がいいと思われていることにも一因があるように思えます

貸主、借主双方が納得できる敷金精算。この考えが浸透すれば賃貸業界が変わり、結果として貸主の方の不動産価値もあがるのではないでしょうか?

この記事を読んだ方が、少しでも『認識を変えてみよう』『勉強してみよう』と思っていただければ、筆者としてこれほどの喜びはありません。