a2d05209f8c20ef085689b10748f2350_s最近、「退去立会い時に原状回復費用を計算した精算書にサインを求められる」というケースが多くなってきたようです。

貸主・不動産会社としては、立会い時にサインをもらいたい理由は二つあります。

①:立合い時にサインをもらっておけば、後日精算書を送付する手間がはぶける

②:のちのちトラブルになっても、「立会いの時のサインもらいましたよね?」と主張できる

①は、借主にも敷金精算が早まるというメリットがあります。しかし、ご相談をいただくなかで、「退去立会い時に精算書へのサインを求める理由」としては、②が多数なように感じます。

中には、「精算書にサインしないと退去は認めない。サインするまで家賃を請求する!!」という貸主・不動産会社もいるようです。

では、貸主・不動産会社の言うように、精算書にサインをした以上は原状回復費用を負担しなければいけないのでしょうか?

本記事は、『精算書にサインをしたら原状回復費用を必ず負担しなければいけない?』について詳しく解説致します。

サインした内容の費用負担が原則

退去立会い時に、精算書にサインを求めること自体は違法・不当なことではありません。適正な精算金額を提示しているのであれば、敷金精算が早まるといった借主のメリットもあります。

適正な精算金額であれば、サインした内容の費用負担が原則になります。

不当な請求の精算書にサインしてしまった場合

問題なのは、不当な精算内容である精算書にサインしてしまった場合です。

そもそも、不当な精算内容とは以下のようなケースが考えられます。

  • 特約がないのに、本来は貸主負担であるはずの費用が請求された場合(ルームクリーニング費用、畳の表替え費用等)
  • 一部にキズや汚れをつけてしまった箇所があるが、過分な範囲の補修費用を請求された場合(クロスの一面だけのキズなのに、部屋全体の補修費用を請求された)
  • 経過年数が考慮されず100%の負担を請求された場合(タバコを吸っていたが、経過年数が考慮されていない)
  • 特約が無効なのにルームクリーニング費用を請求された場合

上記のような請求はすべて不当な精算内容です。不当な精算内容である精算書にサインしてしまった場合、もちろんサインの効力を争うことが可能です。

本来貸主負担であるはずの費用が請求された場合

原状回復の原則としては、借主が負担すべき原状回復の範囲は、“借主の故意・過失、善管注意義務違反及びその他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損”に限られます。それ以外の経年劣化・通常損耗の補修費は貸主負担が原則であり、当該費用を請求された場合は敷金返還・請求金額の減額を争うことが可能です。

POINT

※借主の故意・過失、善管注意義務違反及びその他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損ってなに?:詳しくはこちら👉故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損とは?

※経年劣化・通常損耗ってなに?:詳しくはこちら👉経年劣化・通常損耗とは?

本来借主が負担する義務のない項目まで精算書に含まれていないか、精算内容は必チェックするようにしましょう。

過分な範囲の補修費用を請求された場合

クロスの一部を傷つけてしまった場合、借主が負担すべき範囲は当該キズが発生したクロスの一面”です。しかし、貸主・不動産会社の中には、居室の壁すべてを借主負担として請求しているケースが見受けられます。

適切な原状回復範囲については、弊所別記事『クロスの一部にキズ!!壁全体のクロス張替が必要?【知ってると得する】』をご参考ください。

経過年数が考慮されず100%の負担を請求された場合

借主に原状回復義務が発生しても、借主がその補修費用を100%負担するわけではありません。これは「物の価値は年数の経過によって減少していく」という考え方があるからです。

上記考えを「経過年数」といい、実際の敷金精算の場面でもトラブルになることが多い問題なので、ぜひ覚えておいてもらいたい重要なポイントです。

POINT

※経過年数ってなに?:詳しくはこちら👉経過年数とは?

経過年数の考慮については、下記弊所別記事をご参考になさってください。

●こちらの記事もおススメです原状回復って新品に戻すこと?原状回復の考え方を詳しく解説!

●こちらの記事もおススメです経過年数の具体的な年数が知りたい!!

●こちらの記事もおススメですタバコのヤニ汚れに経過年数(耐用年数)は考慮されないのか?

特約が無効なのにルームクリーニング費用を請求された場合

賃貸借契約の中には「退去時ルームクリーニング費用は借主負担とする」や「退去時畳の表替え費用は借主負担とする」という契約内容であることが多くあります。この契約内容は「特約(原状回復特約・ハウスクリーニング特約)」と言われます。

※特約ってなに?:詳しくはこちら👉特約(原状回復特約・ハウスクリーニング特約等)とは?

この“特約(原状回復特約・ハウスクリーニング特約)”というのは「本来貸主負担である費用を借主負担にする」という、借主に不利な契約内容になります。

したがって裁判所は、「特約は無条件に有効ではなく、一定の要件を満たした場合に有効である」と判断している点に注意が必要です。

特約の有効性・無効性については、弊所別記事『知っていると敷金返還に有利!!特約(原状回復・クリーニング特約)について!!』を参考にしてください。

まとめ

退去時の立会いは、原状回復費用負担を決める上で重要なものです。少しでも疑問に感じることなどがあれば、質問するなどして十分慎重におこなう必要があります。

しかし、慎重におこなっていても慣れない敷金精算の場面では予期せぬトラブルに巻き込まれてしまうこともあるかもしれません。

そんな時は、本記事で解説した「精算書にサインをしてしまっていても、不当な精算内容であれば返還請求を争うことができる」を思い出していただき、キッチリと返還請求するようにしましょう!!